一般的に、朝食は食べた方が良いそうです。それでは、「トーストとコーヒーだけの簡単な朝食」でも構わないのでしょうか?
忙しい朝は、かけられる手間も時間も限られています。何かを口に入れる(カロリーを摂取する)だけでも意味はありますが、「これで大丈夫なの?」と気になる方もいるでしょう。
こんにちは、現役内科医の「えま」です。医師歴25年、総合診療部や代謝内科で勤務してきました。一人暮らしの中で、日々の食生活を工夫しながら過ごしています。
今回は、朝食で不足しがちな栄養について考えます。
トーストとコーヒーだけでも、ある程度のカロリーは摂取できます。体を動かすエネルギーを補給できるのは、よいことです。
しかし、たんぱく質が足りません。野菜も足りませんが、今回はたんぱく質不足に焦点を当てます。
朝食でたんぱく質を摂らないと、半日以上たんぱく質が不足した状態が続いてしまいます。たんぱく質は、筋肉などをつくる大切な成分です。欠乏状態が続くのは、好ましくありません。少しでよいから、たんぱく質を摂ることをおすすめします。
朝に手軽に摂れるたんぱく質として、ヨーグルト・牛乳・豆乳・ゆで卵などがあります。
健康は、生活の土台です。ちょっと気をつけるだけで、未来の体に大きな差が出ることもあります。朝の食事に、手軽なたんぱく質を一品、加えてみませんか?

トーストとコーヒーだけで朝ごはんって、別に普通じゃないですか?

カロリーは摂れてるけど、たんぱく質がごっそり抜けてるんだよね。そこがちょっと惜しい
トーストとコーヒーだけの朝食でも、まあ、悪くはありません
突然ですが、英語の話です。
朝食は、英語で “breakfast” と言います。breakfastの語源は、「断食を破る」を意味する「break(破る・壊す)」+「fast(断食・絶食)」に由来します。
睡眠中の約8〜10時間、何も食べない「断食(fast)状態」を、朝の食事で「破る(break)」ことがその語源です。
そう考えると、トーストとコーヒーだけの朝食でも、悪くはありません。パンに含まれる糖質は、脳や体を動かすエネルギーになります。「断食を破る」という働きは、きちんと果たしているのです。
過去の記事「朝食抜いても大丈夫?」でも考えた通り、何も食べないよりは明らかに良い選択です。
特に忙しい朝において、「とりあえず何かを食べる」という行動自体に、価値があります。完璧を目指して何も食べないより、不完全でも続けられる方がずっと良い。
しかし、ちょっと「惜しい」のです。
トーストとコーヒーだけでは、たんぱく質が不足します。ここをちょっと変えるだけで、ぐっと良くなります。そこが、惜しいのです。
朝にたんぱく質が不足すると、何が起こるか


寝てる間って、体を修復してるんですね?

そう。だから朝イチでたんぱく質を補給するのが、じつは大事なんだよ
朝食でたんぱく質を摂らない場合、前日の夕食から長時間にわたり、たんぱく質が補給されない状態になります。
人の体は、寝ている間も筋肉や臓器のメンテナンスを続けています。その材料となる主役が、たんぱく質です。
つまり、朝にたんぱく質を補給しないと、体をつくる材料が不足した状態になります。その結果として、筋肉量の低下につながる可能性があります。
これは高齢者だけでなく、若い人でも起こりうる変化です。毎日続けば、日々の小さな不足が積み重なり、長期的には大きな差になるでしょう。
たんぱく質の目安量は、体重1kgあたり約0.8〜1.0gが推奨されています。体重60kgの方であれば、1日あたり約50〜60g程度です。
朝・昼・夜の3食で均等に摂ることが、体への吸収効率を高めるうえで理想的とされています。つまり、朝食を抜いてしまうと、1日のたんぱく質のバランスが崩れやすくなるのです。
また、朝にたんぱく質を摂ることで、昼食前の血糖値の乱高下を抑える効果も期待できます。血糖値が安定すると、昼食の食べ過ぎを防ぎやすくなるというメリットもあります。
私自身も、忙しい当直明けでも冷たい豆乳をコップ一杯だけ飲むようにしています。その一杯があるだけで、午前中の集中力は明らかに違います。当直で体も疲れているのに、たんぱく質まで不足すると、頭も体もうまく動かないと実感しています。
忙しい朝でもできる「たんぱく質の足し方」

朝は時間がない。だから、「手間が多すぎる」ことは続きません。
そこで重要なのは、手間のない「ほんのちょっと」の工夫です。おすすめは、以下のような食品です。
これらは調理の手間がほとんどなく、トーストに一品追加するだけで、栄養バランスは大きく改善します。
特に液体で手早く摂れる牛乳や豆乳は、時間も食欲もない朝でも取り入れやすい方法です。
続けるためのコツは、「目に入る場所に置く」ことです。
たとえば、前日に「翌朝のヨーグルトを小鉢に分けておく」「冷蔵庫の見える場所に豆乳パックを置く」など、視覚的に思い出せる工夫をすると続けやすくなります。人は、目に入るものに行動を左右されやすいものです。
「ほんのちょっとだから、まあいいかな」…そう思えれば、習慣にできそうです。人間の脳は、「ほんのちょっと」に意外と弱いのです。小さなハードルは、越えやすい。だから続く。それで十分です。

豆乳一杯だけでいいなら、さすがにできそうです

それで十分。完璧にやろうとしなくていい。続けることの方が大事だから
無理して朝食を食べない方が良い場合もある?
「朝食を食べましょう。できれば、たんぱく質も摂りましょう」と書きましたが、例外もあります。
それは、前日に明らかに食べ過ぎた場合です。
たとえば前日の夜に、食べ放題に行ったとします。朝起きてみると、まだお腹が空いていない。その場合は、無理して食べなくて良いかもしれません。前日に食べ過ぎたことが明らかであれば、自分のお腹の感覚を確認して、朝食を減らしても良いでしょう。
その場合であっても、水分は忘れずに補給してください。コップ一杯の水や白湯から始めるのが、おすすめです。
ただし、自分のお腹の感覚は、意外にわかりにくいものです。
たとえば、お腹が空いていなくてもダラダラ食べる習慣がある方、食事のリズムが不規則な方は、空腹感のサインが鈍くなっていることがあります。そういった場合は、「お腹の感覚で調整する」よりも、「まず規則的に食べる習慣をつくる」ことが先決かもしれません。
食生活を整えるには、普段の習慣が大切です。だからこそ、「まずは朝のちょっとした食生活を見直そう」というのが、この記事の提案です。
まとめ:朝に一品加えるだけで、未来の体が変わる
トーストとコーヒーだけの朝食は、エネルギー補給という意味では一定の役割を果たしています。しかし、たんぱく質が不足している点は見逃せません。
ここに簡単な一品を加えるだけで、朝食の質は大きく向上します。ヨーグルト・牛乳・豆乳・ゆで卵ならば、忙しい朝でも無理なく続けられます。
重要なのは、「完璧な食事」を目指すことではありません。「無理なく続けられる習慣」を手に入れることです。
朝にちょっと一品を加える。この小さな習慣が、あなたの将来の体を支える一つになるでしょう。ちょっとした習慣に、速効性はないかもしれません。しかし、長く積み重なった日々の習慣は、あなたの未来にきっと影響します。
無理のない範囲で、良い習慣を一つ取り入れてみてはいかがでしょうか。
免責事項
・本記事で提供する健康情報は、あくまで一般的な内容であり、一医師としての経験や知見に基づいて発信しています
・紹介する食品や食材を多量に摂取することで、病気が治ったり、健康がより増進するものではありません
・サプリメントや健康食品は、あくまで日々の食事を補う手段の一つです。持病のある方や薬を服用中の方は、自己判断せず、かかりつけの医師や薬剤師にご相談ください
・当サイトでは、個別の健康相談には応じておりません。現在、治療や保健指導を受けている方は、必ず担当医の方針を優先してください


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