「よく噛んで食べましょう」と言われても、正直面倒ですよね。早く食べて、次の用事に取りかかりたい…一人暮らしのズボラ飯では、スマホを見ながら噛まずに早食いしてしまう人も多いでしょう
こんにちは、私は現役内科医師の「えま」です。医師歴25年、総合診療部や代謝内科で勤務してきました。一人暮らしをしています
今回は、「よく噛む習慣を手に入れる」ための考え方や、簡単なコツをお伝えします
食事を始めてから満腹中枢が刺激されるまでに15〜20分かかるため、早食いの人ほど食べ過ぎやすいと言われています。つい早食いで食べ過ぎる方にこそ、「一口あたり30回噛む」習慣がおすすめです。早食いであっても、30回噛むことで適切に満腹感を得られ、自然と食べすぎを防ぐことが期待できます。これはシンプルで強力な方法です
さらに、炭水化物をしっかり噛むと甘みが増して美味しくなり、適切な満足感も感じやすい。そして、噛むことで消化が促進され、胃腸の負担が減ります
せっかく美味しいものを食べても、噛まずに飲み込めば、味わう前に終わってしまいます
「100回噛め」と言われると現実的ではありませんが、「一口30回噛む」なら続けられるはず。29回でも31回でもなく、目安は30回です。もしそれ以上噛まないと飲み込めないなら、口の中に詰め込みすぎかもしれません
噛む習慣がない人は、何度も噛み忘れるでしょう。でも大丈夫。噛み忘れに気づいたその時から、また噛めばOKです。「もういいや」と挫(くじ)けなければ、必ず習慣になります。習慣になった後は、「自分は30回噛んでいるかな?」と時々セルフチェックすれば、もう完璧です
「面倒くさい」の壁を越えて、健康的で満足感のある食習慣を手に入れませんか? 心配するほど時間はかかりません。これはおすすめです

食事の時、つい噛まずに丸呑みしちゃうんですよね…

ああ、分かります。でも、それだと食べ過ぎやすいんです
それに、噛まずに飲み込むと味がよく分からなくて、ただの喉ごしだけで終わっちゃうんです

でも100回噛めって無理じゃないですか?

さすがに100回は極端すぎて続かないかも。でも一口30回噛むことは、現実的ですよ

30回噛むって、本当に意味あるんですか?

あります! 特に炭水化物をしっかり噛むと甘みが増して美味しくなるし、満足感も出るんです。消化しやすくなって胃腸にも優しいですよ
適切に満腹感が分かるようになり、食べすぎ予防になります

なるほど…。でも途中で噛むのを忘れたらどうしたらいいんですか?
忘れそうだし、続かないんじゃ…?

思い出したその時から再開すればOK!
くじけなければ、そのうちちゃんと身につきますよ
あまり噛まずに早食いしていませんか?…早食いすると、適切な満腹感が分からない→食べ過ぎやすい
突然ですが、皆さんは「食べ放題」に行ったことがありますか?経験がある方ならご存じかもしれませんが、「思ったほど食べられない」のです
特に、おしゃべりしながらゆっくり食べていたら、あまり食べられません
これは私の経験ですが、食べ放題は最初の20分間が勝負です! 時間がたつと、脳の満腹中枢が「食べ過ぎだよ!大丈夫?」と気付くようです
つまり…、「早食いすると食べ過ぎ・太り過ぎにつながる」「20分以上かけてゆっくり食べれば、食べ過ぎにくい」ということです。でも、時間がない現代人は、焦って早食いしがち。では、どうすれば短い時間でも“満足感”を得られるのでしょう?
「もうお腹いっぱい」という指令は、脳の満腹中枢から発せられますが、食事を始めてから15〜20分後に刺激されると言われています
引用元:早食いに注意しましょう、公立甲賀病院 栄養管理課
早食いであっても、「30回噛む」と満腹感を感じやすい
「ゆっくり(20分以上かけて)食べましょう」といわれても、現実的にはなかなか実践できません。時間がない、ついあせってしまう…。早食いが習慣化している方には、難しい問題です
だからこそ、「速くてもいいから、一口30回噛む」が現実的です。20分未満の段階で満腹感を感じるには、30回噛むことが有用。早食いの方こそ、30回噛むことをお勧めします。口の中を噛まない程度のスピードにしましょう
私の経験ですが、食べ放題で「速く30回噛む」を実験したところ、すぐに満腹感が出てあまり食べられませんでした
また私は、「30回噛むダイエット」を実践して痩せました
ダイエットは、欲張りすぎると失敗します。「よく噛まなきゃ」「カロリー減らさなきゃ」「運動しなきゃ」と一度に始めると、『もう嫌だ!』となります。脳は、「ちょっとだけなら良いよね」に弱いのかもしれません。欲張り過ぎずに「30回噛むだけ」と限定すれば、続きやすいように思います
「100回噛め」という極端な話もありますが、それはハードルが高い。大事なのは「続けられること」です。一口30回噛むことを目安にすれば、早食いの人でも無理なく満腹感が得られます
ちなみに、29回でも31回でもなく、30回を数えて噛むのです。30回以上噛まないと飲み込めないなら、口に入れすぎているサインです
下記に、参考となる医学論文を引用します
一口あたりの咀嚼回数が20回以上に増えた小児は咀嚼回数が20回未満の小児と比べて肥満度が有意に減少した(著者”えま”訳)
引用元:Relationship between improvement of the degree of obesity and chewing quency in the infantile obesity resolution seminar
The children whose number of chewings per mouthful was increased to 20 or more times at completion of the seminar significantly decreased the body fatness in comparison with those remaining to chew less than 20 times.
そこで肥満症治療の技法として「咀嚼法」を考案した.「咀嚼法」は1口30回咀嚼させ, その成否を○×で用紙に記録させる
引用元:肥満症治療における咀嚼の意義とその臨床的応用について
(中略)
減量群では咀嚼に代表される食べ方の改善が認められ, 満腹感覚も回復していたことなどが示唆された
噛むべきは炭水化物。味わう方が絶対お得
「全部をよく噛まなきゃ」と思うと続かなくなります。噛むことを特に意識したいのは、炭水化物(ご飯、パン、麺類)です。炭水化物はよく噛むことで甘みが増し、味わいが深くなるので「噛む甲斐」があります。
噛まずに飲み込んでしまうと「味わった記憶がなく、喉ごしだけ」で終わってしまい、満足度が下がります。満足感が足りなければ、食べる量が増えがちです。せっかく食べるなら、噛んで味わった方がお得です

よく噛むこと(咀嚼)は、消化に良い
食べ物をよく噛むことで、唾液の分泌が増加します。唾液には消化酵素(特にアミラーゼ)が含まれており、炭水化物の分解を口の中で早くから始めます。さらに、噛み砕くことで食物の表面積が増え、消化酵素や胃液とよく混ざることで消化・吸収が効率的に進みます。その結果、胃腸の負担が軽減されます
食事を摂ることは、口から始まります。まず、歯で噛むことで、食物を胃腸で消化しやすいように変えます。よく噛まないで食物を飲み込むと、食物の分解・消化・吸収を行なう胃や腸に大きな負担がかかることは言うまでもありません
引用元:お口の健康と胃腸の健康、総合南東北病院
思い出した時から噛めばいい。挫けないのがコツ
噛む習慣がない人は、何度も噛み忘れるでしょう。でも大丈夫。噛み忘れに気づいたその時から、また再開すれば良いのです
「もういいや。どうせダメなんだ」と挫(くじ)けなければ、必ず習慣になります。何度失敗しても、また再開すれば良いのです。習慣になった後は、「自分は30回噛んでいるかな?」と時々セルフチェックすれば、さらに身についていきます
私自身は、「速く30回噛む」を続けたことで「早食いでも、ちゃんと満腹になる」感覚をつかみました。口の中を噛まない程度のスピードで、無理なく続けてみてください。新しい習慣を身につけて、今よりちょっと健康的に暮らしてみませんか?
免責事項
・本記事で提供する健康情報は、あくまで一般的な内容であり、一個人としての経験や知見に基づいて発信しています
・紹介する食品や食材を多量に摂取することで、病気が治ったり、健康がより増進するものではありません
・サプリメントや健康食品は、あくまで日々の食事を補う手段の一つです。持病のある方や薬を服用中の方は、自己判断せず、かかりつけの医師や薬剤師にご相談ください
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